頭の良さよりも性格が大事?

 「頭のよさ」よりも大事なものとは? 脳科学者が思う子供に“本当に必要”な5つの授業 
https://goetheweb.jp/lifestyle/more/20250727-st27?heading=4

記事より引用

これはIQ(知能指数)が人生にどんな影響をもたらすかを示したものです。
一番左側の「収入」を見ると驚くかもしれませんが、予想を裏切り、「IQ」よりも「性格」のほうがなんと約2.5倍も影響を与えています。
しかも、 IQと性格の両方があっても、スコアはそれほど変わりません。人生に最も影響を与えていたものは“性格”だったのです(健康やメンタルも同様でした)。




IQだけ高くても、収入は上がらないだろうけど、ここまで寄与度が低いのは違和感があったので、引用元の論文を読んでみた。(難関大学の卒業者の収入が高いのは周知の事実だし、難関大学に入るにはIQが高いと有利なので)

What grades and achievement tests measure

この論文では、4つのデータセットを分析して、IQ、学校の成績、学力テスト、性格といった因子と、人生における収入や健康状態との相関を調べている。


Stella Maris (Dutch high school students)
・IQテスト:レーヴン漸進的マトリックス
・学力テスト:Differential Aptitude Test (DAT)
・性格:ビッグファイブ(誠実性、協調性、外向性、開放性、情緒安定性)、グリット(忍耐力と長期的目標への情熱)

BCS (children born in one week in 1970 followed until 38 y old)
・IQテスト:レーヴン漸進的マトリックスに類似したテスト
・学力テスト:(i) a vocabulary test, (ii) a spelling test, and (iii) a math test
・性格:自尊心(self-esteem)、統制の所在(locus of control)-おそらく内的統制のほうが望ましい 

NLSY79 (prospective survey of youth 14–21 y old in 1979; currently followed)
・IQテスト:いくつかのIQテスト(学力テストとの相関係数が高いので、おそらく総合的なテスト内容で知識要素も入っていそう)
・学力テスト:Armed Forces Qualification Test (AFQT)
・性格:自尊心(self-esteem)、統制の所在(locus of control)-おそらく内的統制のほうが望ましい 


MIDUS (survey in adult life; baseline 24–34 y old in 1995; follow-up 2004–2006)
・IQ:Brief Test of Adult Cognition by Telephone (BTACT) 
・学力テスト:無し
・性格:ビッグファイブ(誠実性、協調性、外向性、開放性、情緒安定性)



<IQテストについて>

レーヴン漸進的マトリックスは、図形の法則性を推測するもの。


記事で引用されているグラフは、4つめのMIDUSのデータセットを使ったものだけど、ここでのIQは、Brief Test of Adult Cognition by Telephone (BTACT)のスコアをもとに出していて、このテストの内容を見るとIQテストというよりも認知機能テストに近い。

ウェクスラー式の総合的なテストで測定したIQなら、それなりに広い範囲の知能を測定していると考えられるが、レーヴン漸進的マトリックスではあまりに狭い範囲の能力しか測定できていないし、BTACTにいたってはIQテストと呼べないのではないかと思う。


<各データセットのグラフ>
学力テストや学校の成績の人生の各側面への影響は、性格と同じくらいある。

Stella Maris

成人後の収入などのデータは無し


BCS 



NLSY79



MIDUS



<コメント>
性格が人生の各側面に影響を与えるのには私も異論はなく、自尊心と自己効力感が高く、責任感が強く、誠実で、外向的で、オープンな性格で、メンタルが安定している人が、「より望ましい人生」を送れる可能性が高いというのは、当然のことだと思う。

ただ、NLSY79のデータではIQのほうが性格よりも寄与度が高い項目もあり、学校の成績や学力テストの成績(これらには知能と性格の両方が大きな影響を与える)が、「より望ましい人生」にそれなりに寄与するというのは、言及しておいたほうが良いと思う。頭の良さも大事なのです。

また、単に「IQ」「学力テスト」と書かれていても、そのテストの内容には大きな差がある。おそらく、総合的なIQテスト、総合的な学力テストになればなるほど、人生の各側面との相関は高くなると思う。

記事の著者が行っているのは、自分の主張にフィットする部分(MIDUSの結果)だけを抜き出すチェリーピッキングであって、科学教育を受けた人間のやることではない。メディアに出てくる自称専門家なんて所詮はこの程度なのだろうけど、「エビデンス」をアピールする連中には気をつけなければならない。


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