中学受験経験の有無が将来の収入に影響ないという記事について(書き直し)
中学受験の経験、将来の収入に「影響せず」 何を重視? 識者の見方
https://www.asahi.com/articles/ASV9K42RGV9KUTIL027M.html
2022年12月に、25~39歳の中学受験経験者を対象にインターネットで行い、538人から有効回答を得ました。国のデータを踏まえて同年代の平均値と比較したところ、大学進学率は明確に高い傾向がありました。
ただ、収入面では事情が異なります。まず、男性では平均との差がほとんど見られませんでした。女性はやや高い傾向がありましたが、これは大学進学率の高さを背景に、未婚率が高く、正社員として働いている割合が高いことが影響している可能性があります。つまり、中学受験経験者の収入が同年代と比べて明確に高い、という結果は得られませんでした
小学生時代、学校や塾で成績が良かった人ほど、現在の収入も高い傾向がありました。収入の高い仕事に就けるかどうかは、中学受験の有無よりも、もともとの学力など様々な要因がより強く関連しているようです。
元の論文を見つけたので、内容を書き換えました。
Results of attending selective junior high schools on educational attainment and standard of living: a social survey in Japan
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/2331186X.2023.2298045#abstract
<中学受験経験者群>
2022年 オンラインでアンケート実施
最終的に分析対象となった参加者は450人(男性205人、女性245人)、平均年齢は32.26±4.32歳。
参加者条件
- 25~39歳であること
- 首都圏(東京都および3県)または関西地域(大阪府、京都府、兵庫県)に居住していること
- 12歳以上の子どもがいないこと
- 中学受験を受験した経験があること(中学受験をしたが公立中に進学した者は除く)
年収は前年分について回答
<対照群>
「男女共同参画の観点から見た新型コロナウイルス感染症の拡大による影響に関する調査」(内閣府, 2021b)の二次分析データを利用。居住地と年齢を、中学受験経験者群と揃えた。
<年収についての結果>
中学受験経験者群と対照群を比較すると、男性は年収分布に有意差なし、女性は有意差あり。
学歴(大卒、高卒)について調整して比較したこちらの記事でも、「年収(平均、分布)について、女性は有意差があるが、男性は有意差はない」という結果になっている。(平均年収について引用させていただきます。)
参考記事:中学受験経験の有無は、将来収入に本当に影響はないのか?
https://note.com/yohashi/n/nbbd4b6e4d540
まず年収の平均です。階級値は基本的に中央値とし、1,000万円以上は国税調査なども参考に1,500万円として計算します。
論文標本(男):528.5万円 ※95%信頼区間:483.7〜573.4万円
論文標本(女):392.4万円 ※95%信頼区間:351.7〜433.2万円
推定対照群(男):492.3万円
推定対照群(女):304.6万円
論文標本との差は男+36.3万円、女+87.8万円ですが、階級値近似による平均差の検定では、「中学受験と非中学受験で、年収の平均に、男性は有意差なし、女性は有意差あり」となります。
私は、中学受験に年収アップ効果があってほしいと考えているわけではなくて。
四谷大塚偏差値50が50%合格ラインとなる中高一貫校の進学実績の中央値がMARCHにいけるかどうかくらいなので、中学受験生のボリュームゾーンはそのレベル感と考えられる。日本社会の現実として、出身大学で露骨に年収が変わることから、中学受験経験者の男性の年収が全体平均と変わらないというのはとても違和感がある。日本全体から見れば、MARCH出身は高学歴(高偏差値)側になる。
論文では、アンケート回答者の出身大学偏差値もグラフにまとめていて、それを見るとボリュームゾーンがMARCH付近になっている(このグラフでは大学に行かなかったケースは除いている)。
半数がMARCH以上を卒業した集団の平均年収が、日本全体の平均と変わらない? 公式の統計ではないけど、転職斡旋企業の調べた出身大学別平均年収ランキングを見ると、偏差値が高くなるほど平均年収は露骨に高くなるのだが。
なぜこの論文では、世の中の状況と一致しない状況が発生しているのか・・・。そのギャップを埋めるのが未婚率の違いと考えられる。中学受験経験者群は異常に未婚率が高い。
<中学受験経験者群>
未婚率61.8% 既婚率36.4% 離婚率1.8%
<対照群>
未婚率、男性39.9%、女性31.0%。
論文のディスカッションでも未婚率については言及されていて、中学受験をすると晩婚化するのかもしれないと書かれている。しかし、国のデータだと、30代の男性の未婚率は、「高卒→大卒→大学院卒」の順で低くなる(女性の学歴と未婚率の関係は複雑だが)。男性の学歴の高さと年収は比例する。男性の年収と結婚可能性は比例する。
そのため、世の中全体で見れば、偏差値の高い大学出身者が多い中学受験経験者の男性は、30代であっても、少なくとも全体平均と同程度に結婚するはずで、実際には全体平均よりも未婚率は低くなっていると考えられる(中学受験を経験すると人間性に問題を抱えやすくなり結婚しにくくなるとか、中学受験をすると出身大学が同じでも年収が下がってしまうとかの不思議な現象が起きない限りは)。
おそらく、アンケート回答者へのリーチの時点でバイアスが発生して、独身者の割合が高くなったのだろう。
30代の男性における、未婚・既婚の年収差は中央値で120万円となっている。
「未婚男性→結婚した男性→子を持った男性」それぞれの年収差はどれくらいか?
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7e608eaacc339fdb5e56ca65596a84b26e8de666
平均年収差のデータが見つからないため、この中央値の差を使って雑な計算をすると、この論文の中学受験経験者群の男性未婚率を65%として、男性未婚率が対照群と同じ40%だったと仮定した場合は、中学受験経験者群の男性の平均年収は30万円アップして558万円になる。対照群との年収差が66万円になるので、さすがに有意差が出そう。
ここのデータでも、30歳でMARCH出身だと年収550万円付近なので、上の数字と整合性がある(男女別のデータではないがフルタイム社員だろうから男女差は無視できる思われる)。
参考サイト:出身大学別年収ランキング2022(vol.99)
https://hatarakigai.openwork.jp/posts/53203144/

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